「植物あっての昆虫」というように、昆虫相はその地に生育する植物相によって決まるといって過言ではない。
本調査地である自然歩道の自然環境を大きく2つに分けると、一つはクヌギ・コナラなどを中心とした雑木林とシラカシ・スダジイなどの常緑樹林の森林帯、もう一つは谷津周辺の湿地帯である。森林性、草原性、湿地性の昆虫が生息できる自然環境にあり、多様性に富む昆虫相が期待できる。
これらの昆虫相の特徴は、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモン、ムラサキシジミ、クロコノマチョウといった南方系の昆虫が、ここ10年程で定着しつつあること。また、アカボシゴマダラといった外来種が入りつつあること。一方でヒオドシチョウ、テングチョウ、オオミドリシジミ、アカシジミなどの森林性の昆虫が種・個体数ともに減少傾向にあることである。
ただ、これらの昆虫相が維持できるためには、森林帯における適度な光が林床に入るための下草刈りや伐採等の人の手が入る必要がある。いわゆる「山掃除」である。湿地帯も水管理や土泥の処理などを適度にしていかないと乾燥が進み、干上がってしまう。人の手が入らないと昆虫相も単純化してしまう可能性がある環境である。

目  次

1 トンボ目 4 コウチュウ目
2 バッタ目 5 ハチ目
3 カメムシ目 6 チョウ目

 

 

 

「トンボ目」 蜻蛉目

 

オオアオイトトンボ

イトトンボの中では最大で、森林性のトンボ

オオアオイトトンボ

オオアオイトトンボ

である。水辺近くの雑木林の中や周辺で夏から秋によく見られる。胸部と腹部の緑色に光る金属光沢が美しい大型のイトトンボでよく目立つ。池や沼などに張り出した樹木の枝(樹皮下)に産卵し、翌年の春に孵化した幼虫は下の池や沼に落ちる。

 

ホソミオツネントンボ

「細身越年蜻蛉」名前の通り細い体で冬を越す(越年)トンボ。守谷市にいるトンボで成虫で冬を越すトンボは、この種だけである。冬を越した成虫は春に成熟し、枯れ枝のような淡い褐色の体が、オスは水色にメスは少し緑

ホソミオツネントンボ

ホソミオツネントンボ

がかった水色に変色し、交尾・産卵をする。

 

アジアイトトンボ

水田に水が引かれ水辺のまわりの草も伸びてくると、

アジアイトトンボ

アジアイトトンボ

その間をぬうようにイトトンボの仲間が飛び始める。守谷市のイトトンボの仲間で最も普通に見られたイトトンボの一種が、このアジアイトトンボ。オスは腹端から二つ目の節(第9節)が青いので他のイトトンボとは区別がつく。

オニヤンマ

小川の上を往復飛翔する姿をよく見ることができる。

オニヤンマ

オニヤンマ

日本最大のトンボでもある。ヤゴは流水の中の落ち葉や砂泥のなかにいることが多く、3~4年もの幼虫期を過ごす。こうした流水の環境は年々少なくなっているが、守谷市でも谷津田のまわりなどでオニヤンマを見ることができる。

ハグロトンボ

成虫は羽化後しばらくは薄暗い林の中で生活することが多く、その後、成熟すると明るい水辺にもどり水面を飛来する姿も見られる。本種の幼虫は

ハグロトンボ

ハグロトンボ

ゆるやかな流れのある水域を好み、水中植物にしがみつくように生活する。水生植物が繁茂する流水域とそれに隣接する林が必要なトンボである。

アキアカネ

初夏に羽化し、夏には山地付近の涼しい

アキアカネ

アキアカネ

場所に移動して避暑する。アキアカネは日本特産種。弥生時代、豊作の祈りを込めて鳴らされたと言われている銅鐸にはトンボの絵が描かれている。秋の収穫の時期に多数現れ、収穫後の田んぼの土に腹部を打ち付けて産卵する様は、豊作のシンボルに成り得た理由かもしれない。

ウスバキトンボ

南方から飛来してくるトンボで、5月頃から晩秋ま

ウスバキトンボ

ウスバキトンボ

で見られる。成長が早く世代交代を繰り返しながら北へ北へと移動し、分布を広げていくトンボである。翅は広く、特に後翅の基部は大きく内側にふくらんでおり、長距離飛行に適している。しかし、低温に弱く、守谷市でも冬を越せずに死滅する。

オオシオカラトンボ

シオカラトンボと似ているが、翅の基部に

オオシオカラトンボ

オオシオカラトンボ

黒色紋があるので容易に区別できる。谷津田のまわりにある斜面林の縁を歩くと稲が青々と育った田と林の間を飛び交うこのオオシオカラトンボが見られ、オープンランドや広い水域に多いシオカラトンボとの棲み分けを感じることができる。

シオカラトンボ

トンボの仲間は、羽化後間もない未熟な時

シオカラトンボ

シオカラトンボ

と成熟した時とで、体の色が変わる種類が多い。シオカラトンボは未熟な時はオスもメスも褐色で、いわゆる「麦わらトンボ」。成熟すると、オスは青黒っぽくなり白い粉をふくが、メスは「麦わらトンボ」のままである。シオカラトンボは池や沼などの水辺を好む止水性のトンボである。

ショウジョウトンボ

ショウジョウ(猩々)は赤い毛が生えている中国

ショウジョウトンボ

ショウジョウトンボ

の伝説上の動物。体が真っ赤なこのトンボの名前の由来になっている。ただ、メスは全身黄色っぽい色で別の種類のようである。また、ショウジョウトンボは赤とんぼの仲間と異なり、腹部の上面に稜があることで区別できる。

ノシメトンボ

守谷市で多く見られる赤とんぼの仲間は、

ノシメトンボ

ノシメトンボ

アキアカネ、ナツアカネ、マイコアカネ、ノシメトンボの4種である。その中でもノシメトンボは翅の先が黒いので容易に判別できる。また、ノシメトンボは6月から10月下旬ごろまで見られ、1年間の中で最も数多く目にすることができる赤とんぼである。

ギンヤンマ

子ども達にとってトンボ採りの一番の相手だっ

ギンヤンマ

ギンヤンマ

たギンヤンマ。水辺は「子どもだけでは遊んではいけない危険な場所」として学校で指導している。今、麦わら帽子をかぶってギンヤンマを追う子ども達の姿はほとんど見られない。しかし、子ども達と水辺の昆虫とがかかわる今なりの方法を模索していきたいと思う。

ハラビロトンボ

トンボ科のなかでは小型で、名前の通り腹部が

ハラビロトンボ

ハラビロトンボ

短く太いのが特徴であり、同定は容易。オス・メスともに未熟個体は黄色だが、オスは成熟するにつれて黒っぽくなり、老熟すると青色になる。成熟したオスは縄張りをもち、他の個体が入ってくると腹部をそらせて追い払う占有行動が見られる。

ウチワヤンマ

大型のトンボで腹部第8節が団扇状に広がっているのでよ

ウチワヤンマ

ウチワヤンマ

く目立つトンボである。その特徴からよく「車引き」とか「車トンボ」とも呼ばれている。体が大きく黄色と黒の模様からもヤンマの仲間のようだが、「ヤンマ科」ではない。羽化したての未熟な成虫は、水辺を離れ、林周辺で見かけることがある。成熟した成虫は、夏、水辺にもどってくる。

 

 

 

「バッタ目」   目次に戻る

クルマバッタモドキ

近縁種のクルマバッタと同様に、後翅の中央部に半

クルマバッタモドキ

クルマバッタモドキ

円状を描くような黒帯があり、飛ぶときにその半円がよく目立つ。「クルマ」の名前の由来にもなっている。胸部の背面に一対の「く」の字形の白い線があり、それがX字形に見え、クルマバッタと区別できる。クルマバッタの方が一般に有名だが、守谷市では「モドキ」の方が数多くみられる。

ショウリョウバッタモドキ

名前の通りショウリョウバッタによく似ているが、

ショウリョウバッタモドキ

ショウリョウバッタモドキ

体長は3,4㎝程で小さく、背面は淡い紅色。頭部から背面にかけて直線状になっていることも違いである。また、ショウリョウバッタの雄は、飛ぶときにチキチキという音を出すが、本種は出さない。県内での個体数は激減傾向にあり、茨城県では存続基盤が脆弱な種として、茨城県レッドデータブックでは希少種となっている。

アオマツムシ

夏から秋にかけて街路樹や庭の木の上などから

アオマツムシ

アオマツムシ

「リュー、リュー、リュー」と大きな声が聞こえてくる。明治時代に中国大陸から日本にやって来たといわれている。守谷市でも昭和50年代頃からその声が目立つようになり、市街地の林では、鳴く虫の優占種になっている。

クビキリギス

バッタの仲間は触覚が短く、頭と目が大きいが、

キリギリスの仲間は触覚が長いのが特徴である。バッタやキリギリスの仲間の多くは、卵で冬を越す

クビキリギス

クビキリギス

が、クビキリギスは成虫で冬を越す。10月頃から次の年の7月頃まで成虫で過ごす。春や初夏に草原や庭木などからジージーと連続的に鳴く声が聞こえてくるのは、だいたいがこのクビキリギスである。

 

 

「カメムシ目」  目次に戻る

 

アカスジキンカメムシ

成虫は2㎝近くになる大型のカメムシである。

アカスジキンカメムシ

アカスジキンカメムシ

青緑色の金属光沢で名前の通り赤い筋が入っている。「臭い」というカメムシのイメージを払拭させるような綺麗な容姿。横から見ると背中が丸く盛り上げっていてブローチにもなりそうである。成虫は6月頃から雑木林周辺のフジやミズキなどで見られるが、個体数は多くはない。

エサキモンキツノカメムシ

背面に黄色の大きなハート形の紋がある愛らし

エサキモンキツノカメムシ

エサキモンキツノカメムシ

い姿のカメムシである。また、メスは卵から1齢幼虫になるまで保護する習性がある。数十個の卵を抱えるように自分の体を覆い被して敵から守る。敵が近づくと特有の臭いを出して撃退する。形態も生態も特徴のあるカメムシで、冬は成虫で越す。

マルカメムシ

春から秋にかけては、マメ科植物の茎で集団でいる

マルカメムシ

マルカメムシ

姿をよく目にする。特に夏から秋にかけてはクズの茎で数十頭の集団を見かけることが多くある。丸くてかわいらしい5㎜程の小さな成虫だが、うっかり触るとカメムシ特有の悪臭を放つ。秋、干した洗濯物に潜り込んで、マルカメムシの悪臭の被害を訴える声を最近よく耳にする。

アブラゼミ

昆虫の飼育で子ども達が感動するのは羽化の瞬間である。

アブラゼミ

アブラゼミ

セミの羽化のシーンは子ども達の歓声を誘う。アブラゼミの羽化は午後7時頃から始まり、8時から9時にかけてピークになる。守谷市では急速に宅地化が進んだが、毎年、このセミは数多く見られ、羽化の感動を子ども達に見せてくれる。

クマゼミ

取手市において2007年に抜け殻が発見され、

クマゼミ

クマゼミ

成虫の発生が確認されたが、他の市町村ではまだ確実な発生は確認されていない。ただ、毎年、その特徴ある鳴き声は守谷市でも聞かれている。丹念に調査すれば、抜け殻が見つかる日はそう遠くはないと思われる。

 

「コウチュウ目」     目次に戻る

 

アオオサムシ

石の下などで見かけるゴミムシの仲間を一回り大き

アオオサムシ

アオオサムシ

くしたような昆虫がオサムシである。オサムシの仲間のほとんどは後翅が退化しており、飛ぶことができない。そのため移動範囲が狭く、地域によって前翅の色が多様に変化する。中でもアオオサムシは青い金属光沢をしている美しいオサムシである。冬は林周辺の地中などで成虫で冬眠する。

セアカオサムシ

胸部は赤金色に光り、地味だが綺麗なオサムシである。

セアカオサムシ

セアカオサムシ

茨城県レッドデータブックでは危急種である。漫画家の手塚治(おさ)虫(む)は「オサムシ」が好きで自分のペンネームにしたことは有名である。採集するには、活動期におけるトラップ採集(餌の入った紙コップ等を土の中に埋めて採集する)と越冬個体を掘り当てる「オサ掘り」の2通りの方法がある。

ヤマトタマムシ

メスはサクラ、エノキ、ケヤキ、シデ等の枯れ木に産卵し、

 ヤマトタマムシ


ヤマトタマムシ

幼虫はその材を食べて育つ。成虫になるまでには3年かかる。社寺林や屋敷林等の古木や枯れ木が減ったためか、タマムシの個体数は激減している。「茨城における絶滅のおそれのある野生生物」茨城県版レッドデータブック(H.12)で危急種になっている。

オオクチキムシ

オオクチキムシは名前の通り、朽ち木の中から多く出てくる

オオクチキムシ

オオクチキムシ

甲虫の一種である。冬は集団で越冬している姿をよく見かける。日陰にある朽ち木の中は気温が安定しており、外敵からも守られているためか甲虫類にかかわらず、多くの昆虫類の越冬場所になっている。春から秋の活動時期も林内の朽ち木のまわりで生活している。

ノコギリクワガタ

カブトムシの成虫が生きられるのは夏だけだが、

 ノコギリクワガタ


ノコギリクワガタ

クワガタムシの仲間は成虫で越冬し3年以上生きる種類もいる。成虫の大きさには個体差が大きく、これは幼虫期の栄養状態や食料の質、生息場所の水分の含有度などが原因である。守谷市ではノコギリクワガタとコクワガタがいるが、ノコギリクワガタの方が数は少ない。

ヨツスジハナカミキリ

ヨツスジハナカミキリは特に針葉樹の朽ち木などに卵を産み付け、

ヨツスジハナカミキリ

ヨツスジハナカミキリ

その中で幼虫は育つ。守谷市森林公園のアカマツの切り株や朽ち木や割れ目に産卵している姿をよく見かける。細長い体と黄色と黒の縞模様は一見するとハチに似ているので、身を護るのにも役立っている。

マメハンミョウ

成虫は植物食で、特にダイズなどの畑の作物などを荒ら

マメハンミョウ

マメハンミョウ

す害虫だが、幼虫はイナゴなどのバッタの卵塊を食べて育つ益虫である。体内にカンタリジンという毒性の物質が含まれている。甲虫の仲間だが、体は柔らかく、採集するときに体液に触れるようなことがあると、皮膚が炎症を起こすので注意が必要。

 

「ハチ目」     目次に戻る

 

オオスズメバチ

昆虫の中でも最も進化した仲間といわれているスズメバチや

オオスズメバチ

オオスズメバチ

アシナガバチのような社会性昆虫は、秋になると巣は解散する。分散した働き蜂は冬には死滅するが、秋には雄バチが産まれる。雄バチと交尾した女王バチは越冬し、翌年の春、巣作りを始め、その巣からは多くの働き蜂が羽化していく。

クロスズメバチ

名前の通り体色は黒で、白い縞がある。体

クロスズメバチ


クロスズメバチ

長はミツバチ程度である。地中に巣を作るので土蜂(ツチバチ)とか地蜂(ジバチ)とも呼ばれている。信州地方では、幼虫を煮て食用にすることで有名である。大型で黄色と黒の警戒色をもつスズメバチのイメージとは異なるが、地中にある巣に気づかず、うっかり近づくと集団で攻撃してくる姿はやはりスズメバチの仲間である。

フタモンアシナガバチ

アシナガバチは本来、林の周辺で生活する種類が多いが、

フタモンアシナガバチ

フタモンアシナガバチ

フタモンアシナガバチは草原性のハチで草の茎などに巣を作る。住宅地周辺は雑草や背丈の低い木などが点在する環境のためか、人家近くでよく見られる。名前の通り、腹部には2つの黒紋がよく目立つ。

「チョウ目」     目次に戻る

 

アオスジアゲハ

南方系のチョウで、茨城県北部では少なくなる。幼虫はクスノキやタブノキなどを食べ、成虫は年2~3回発生する。春に発生した成虫の次世代が7月に羽化する。翅のエメラルド色の部分はチョウやガに特有の鱗粉がなく、翅の地色なので、ずっとこの色を保持することができる。飛び方も敏捷で、空中戦でこのチョウを採集することは至難の技

アオスジアゲハ

アオスジアゲハ

カラスアゲハ

ツクツクボウシの声、クサギの花に飛び交う黒いアゲハ。夏休みも後半に入ったなあと感じる。クロアゲハに似ているが、深い緑色の金属光沢が光ったり、前翅の裏に白い帯が見えたらカラスアゲハ。クロアゲハの黒い翅に緑や白、オレンジなどの化粧をほどこしたか

カラスアゲハ

カラスアゲハ

のような美しいアゲハである。しかし、ここ10年ぐらいで県南・県西部では激減した。

アゲハ

アゲハ

アゲハ

誰もが知っているアゲハの黄色と黒の縞模様。林の周辺や樹間を飛ぶ際、その模様は光と影のコントラストを表現しているようである。また、この模様は日高敏隆著「チョウはなぜ飛ぶか」(1975)によれば、オスがメスを見つける際のサインであると述べられている。たとえ紙であっても黄色と黒のストライプには、オスが引きつけられるそうである。

ジャコウアゲハ

河川敷などの草原をひらひらと優雅に飛ぶ黒褐色のアゲハ。特に雌は、薄い茶色の翅で、他のアゲハの仲間とは一見して区別できる。本種はウマノスズクサというツル性の植物を食草とする。この植物は毒性の強いア

ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハ

ルカロイドを含んでいる毒草である。幼虫時代に体に取り込んだ有毒物質は成虫の体にも含まれていて、外敵が本種を食するのを嫌う。

 

ナガサキアゲハ

ナガサキアゲハ

ナガサキアゲハ

近年、数多く見られるようになった南方系のチョウである。10年程前までの図鑑によると近畿から南西諸島に分布する、とあるが、今、県南地区ではむしろクロアゲハよりも多く見かけるようになった。アゲハの仲間の多くは、後翅にアゲハ特有の尾状突起があるが、ナガサキアゲハにはないので、飛んでいてもすぐに判別することができる。

ウラギンシジミ

名前の通り翅の裏側が一面銀箔をはったかのようなチョウである。幼虫はマメ科植物を食べ、春と秋に成虫は発生する。秋、クズの花を丹念に探すと、花に擬態しているかのような独特な姿をした幼虫を見つけることができ

ウラギンシジミ

ウラギンシジミ

る。成虫はキラキラと銀色の翅を輝かせ、せわしなくクズのまわりを飛ぶ姿が見られる。

 

アカシジミ

アカシジミ

アカシジミ

クリの花のにおいが雑木林から漂う6月。クリの花には多くの種類の昆虫が集まる。そのなかにオレンジ色をしたシジミチョウがいれば、それはおそらくアカシジミである。幼虫は雑木林のクヌギやコナラの若葉を食べて育つ。成虫は5月下旬から6月にかけて羽化し、雑木林の樹上を主に夕方に飛び交うので、よほど意識しないと見つからない。

オオミドリシジミ

オオミドリシジミ

オオミドリシジミ

シジミチョウとしては大型で、青緑の金属光沢、宝石のようなキラキラした翅である。ただ、雌は違う種類かと思うような黒い翅である。成虫は年に1回梅雨時期に発生し、数は多くはないが、雑木林(クヌギやコナラ林)で見ることができる。特にクリの花が好きで、吸蜜に来ている姿を見ることがある。年々減少傾向にある雑木林のチョウの一種である。

ツバメシジミ

春、守谷市の草原で青や黒色をしたシジミチョウがいたら、ルリシジミ、ヤマトシジミ、ツバメシジミである。3種ともよく似ているが、止まっている姿を見ると区別がつく。ツバメシジミは後翅裏面に、赤い斑紋とひげのような突起がある。幼虫の食草はマメ科植物であるため、成虫は特にシロツメクサやカラスノエンドウに産卵する姿がよく見られる。

ツバメシジミ

ツバメシジミ

ミドリシジミ

ミドリシジミ

ミドリシジミ

河川敷や谷津では、湿地を好むハンノキの林が見られる。春、ハンノキの芽生えとともにミドリシジミの卵は孵化し、幼虫はハンノキを食べて育つ。成虫は入梅する6月中旬ごろから8月初旬頃まで見ることができる。オスの翅の表は金属光沢の緑色で、光の当たり具合で青や紫にも見える。翅の裏はオスもメスも金色。派手で美しいチョウである。

ムラサキシジミ

ムラサキシジミ

ムラサキシジミ

名前の通り翅の表は青から紫色の金属光沢。昭和末期は守谷市では数少ないチョウだったが、今は雑木林などの周辺で数多く見られるようになった。森林性の昆虫は全体的に個体数が減少傾向にあるが、増加傾向にあるこのチョウの姿は目を引く。南方系のチョウで、成虫の姿で冬を越すシジミチョウである。

ルリシジミ

ルリシジミ

ルリシジミ

守谷市で春一番に羽化するチョウは、シロチョウ科ではモンシロチョウ、シジミチョウ科ではベニシジミとルリシジミ。ルリシジミは一年間に3回から4回成虫が発生する。名前の通りオスの翅の表はルリ色をしている。メスは翅の基部から半分くらいまでがルリ色で、翅のまわりは黒色である。草原のようなオープンランドより、雑木林周辺などの場所を好む。

ベニシジミ

ベニシジミ

ベニシジミ

草原などのオープンランドをちらちらとせわしなく飛ぶ小さなシジミチョウ。よく見ていないと見失いそうになるが、すぐに葉の上に止まって翅を半開きにし、翅を開いたときの鮮やかな前翅のオレンジ色はインパクトがあり目をひく。1年の間で4~5回成虫は発生し、いつでも普通に見られるシジミチョウである。

ヒメウラナミジャノメ

ヒメウラナミジャノメ

ヒメウラナミジャノメ

名前の通り翅の裏の細かい波模様と目玉模様が特徴のジャノメチョウ。目玉模様をもち、黒から茶色を主とした地味な色彩であるためか、「チョウ」ではなく「ガ」という感覚で見ている方が多い。止まるときの姿や触覚の形、活動時間などでチョウとガの違いがあるが、例外的な種もいて、はっきりとした区別点があるわけではない。

サトキマダラヒカゲ

サトキマダラヒカゲ

サトキマダラヒカゲ

1970年頃までは「キマダラヒカゲ」という一つの種であったチョウが、サトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲという2種に分化された。名前の通り一般にヤマキマダラヒカゲは山地性であるが、サトキマダラヒカゲは平野部の林や人家の庭木などでもよく見られるチョウである。夕方、敏捷によく活動し、樹幹で翅を閉じて上向きに止まる習性がある。

ヒメジャノメ

ヒメジャノメ

ヒメジャノメ

薄茶色のジャノメチョウは日陰を飛ぶような印象だが、ヒメジャノメは林や田畑周辺などの明るい場所で、ゆったりと飛んでいる姿をよく見かける。成虫は花に来ることはほとんどなく、腐った果実などで吸汁する。幼虫はススキやチヂミザサなどのイネ科植物やアズマネザサなどのタケ科植物も食べる。

ヒカゲチョウ

ヒカゲチョウ

ヒカゲチョウ

成虫は1年に2回発生する。守谷市で発生状況を調査した時は、6月と9月に成虫発生のピークが見られた。名前の通り林やその周辺のうす暗い場所を好む。花に来ることはなく、専ら樹液やくさった果実などで吸汁する。幼虫はタケやササの仲間を食する。そのためか下草が整理されていないササ類が繁茂した雑木林などでも飛び交う姿が見られる。

クロコノマチョウ

クロコノマチョウ

クロコノマチョウ

南方系のチョウで、古い図鑑では静岡県が土着の北限であろうと書かれていた。しかし、1994年9月と11月に守谷市で確認され、1990年代に入ってからは、県内で次々と採集の報告がされるようになった。クロコノマチョウは県内に定着したものと考えられる。

キチョウ

キチョウ

キチョウ

キチョウと同じような黄色いチョウには他にもモンキチョウとツマグロキチョウがいる。モンキチョウはモンシロチョウのように翅に黒い紋があるので、すぐに区別がつくが、ツマグロキチョウは非常によく似ている。キチョウは数多く見られるが、ツマグロキチョウに関しては平成になってから守谷市での生息は確認されていない。

スジグロシロチョウ

スジグロシロチョウ

スジグロシロチョウ

モンシロチョウとよく似ているが、よく見ると翅に黒い筋がある。モンシロチョウは草原のようなオープンランドを好むのに対し、このチョウは日向と日陰が混在する林の周辺のような場所を好む。また、モンシロチョウの幼虫は人間が栽培するアブラナ科植物を好むのに対し、このチョウの幼虫はイヌガラシなどの野生のアブラナ科植物を好む。上手にすみ分けしているようである。

ツマキチョウ

オスの前翅の先端(つま)が黄色いので、ツマキチョウの名がある。止まった姿をよく見ないと、飛んでいる姿だけでは、モンシロチョウのようである。ただ、ツマキチョウは、早春期にしか成虫は発生しない。春に産まれた幼虫は、タネツケバナを食べて育ち、夏までには蛹になる。蛹で秋と冬をすごし、春に羽化するという周期である。

ツマキチョウ

ツマキチョウ

 

 

イチモンジセセリ

イチモンジセセリ

イチモンジセセリ

幼虫はエノコログサやススキなどのイネ科植物を食するが、特に稲の害虫として有名である。稲の葉をつづり、そのツトを幼虫はすみかにする。成虫は茶から黒っぽい色のセセリチョウで、名前の通り後翅の白い斑紋が一直線に並んでいるので、すぐに判別がつく。9月に成虫は多く発生し、草原の秋の花を訪れる姿をよく目にするようになる。

ギンイチモンジセセリ

ギンイチモンジセセリ

ギンイチモンジセセリ

セセリチョウの仲間は、せわしなく敏速に飛ぶ種類がほとんどだが、このチョウは割に緩やかな飛び方をする。飛んでいる姿は一見小さな蛾のようである。しかし、止まると、黄褐色の地色に銀白色のラインがある後翅が目立ち、きれいというより妖美な雰囲気を感じさせる。名前の通り「銀一文字」。ただ、翅の表は黒一色である。

ミヤマチャバネセセリ

ミヤマチャバネセセリ

ミヤマチャバネセセリ

茶色っぽい翅をもち、白い斑点のあるセセリチョウは、県南地区の平野部では6種類いる。ミヤマチャバネセセリは後翅裏面の一列の白斑の内側に、大きな白斑があるので静止した姿を観察できれば容易に判別できる。山地性の傾向を示すこのチョウは、守谷市では数少ないチョウであった。しかし、近年、春と秋に見られるようになってきた。

アカタテハ

アカタテハ

アカタテハ

きれいな翅の模様とそれを彩る赤が特徴である。幼虫はカラムシなどのイラクサ科の植物を食べる。幼虫は葉裏が表になるように葉の両端を糸でつづって袋状にし、その中で幼虫と蛹は生活する。カラムシは葉の裏が白いので、幼虫や蛹がいる袋状の巣はすぐに見つけることができる。

イチモンジチョウ

イチモンジチョウ

イチモンジチョウ

イチモンジチョウはモンシロチョウを一回り大きくしたくらいの茶褐色のチョウで、林縁を軽快に飛ぶ。よく似た種類に「アサマイチモンジ」というチョウがいるが数は少ない。違いは手にとって調べないと見分けがつかない。食草も同じスイカズラ等で形態的にも生態的にも違いはほとんどない。原因を知るには種間関係を調べる必要があると考える。

キタテハ

キタテハ

キタテハ

守谷市内にいるタテハチョウ科のなかで一番数が多いのはキタテハである。林の周辺に多いカナムグラというとげのあるツル性の植物を食草としている。年に2回初夏(夏型)と秋(秋型)に発生し、秋型は、成虫のまま冬を越します。翅のまわりに切れ込みがあり、秋型は夏型よりも切れ込みが深くなる。

ルリタテハ

ルリタテハ

ルリタテハ

ホトトギスの花が咲く秋、葉の裏を見てみると、大きなとげをもつ毛虫を見つけることがある。これが幼虫である。雑木林ではサルトリイバラによく幼虫がついている。成虫は雑木林の周辺を飛び交う。翅の裏面は真っ黒だが、表面は黒い翅の外縁にルリ色の鮮やかな帯、前翅の前縁近くには白く短い帯の鮮やかな色彩である。

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ

成虫は5月から6月に発生し、約一ヶ月程活動した後、夏眠に入る。冬も成虫のまま冬眠する。翌春、再び活動をはじめ、産卵し、一生を終える。成虫の期間は初夏から来春までと長いが、実際に活動している期間はそれほど長くはない。図鑑等によると、このヒオドシチョウの休眠状態についての詳細は、あまり明らかになっていないとのことである。

コムラサキ

コムラサキ

コムラサキ

夏、雑木林の樹液にはゴマダラチョウ、キタテハ、ヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲでにぎわう。時折、コムラサキがやってきて、キラキラ紫色の翅を光らせる。コムラサキはヤナギ類を食樹としており、そのまわりを敏速に飛び交うが、樹液に来たときは、人の気配にも鈍感になっている。近くまで寄って吸蜜する姿をじっくりと観察することができる。

ゴマダラチョウ

ゴマダラチョウ

ゴマダラチョウ

昭和30年代頃までは守谷市で見ることができた国蝶オオムラサキ。今はその姿を見ることはできない。ゴマダラチョウはオオムラサキと近縁種。2種とも冬は食樹エノキの根元で幼虫越冬する。ゴマダラチョウの成虫は年2回5月と8月に発生するが、オオムラサキは年1回6月の発生である。ゴマダラチョウがずっと発生を続けることができたのは、この発生サイクルの違いも理由の一つと考えられる。
ここ数年、さらにアカボシゴマダラというエノキを植樹とする近縁の外来種が守谷市に入ってきている。このチョウは年3回発生していると考えられる。種間競争の中で、ゴマダラチョウの姿も少なくなるのではと懸念しているところである。

ヒメアカタテハ

ヒメアカタテハ

ヒメアカタテハ

アカタテハとよく似ているが、後翅の模様が異なるので区別がつく。幼虫の食草はヨモギやゴボウで、幼虫の姿も秋によく見られる。ただ、冬の低温に弱いためか春には個体数がぐっと減り、夏以降に多くなる。このチョウは世界中に広く分布し、汎世界分布種とされている。ヨーロッパ等では、群集で海を渡る姿が観察されている。

コミスジ

コミスジ

コミスジ

タテハチョウの仲間は滑空するような飛び方をする。特にこのチョウは羽ばたいた後、翅を開いてゆったりと滑空し特徴がある。その姿はアゲハやモンシロチョウのようなチョウとは違った優雅さを感じさせる。日当たりの良い雑木林の周辺を好んで飛びます。止まる時には翅を開きます。黒地の翅に3本の白い横線があり、「三筋(ミスジ)」の名がある。

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン

南方系の種で茨城県では70年程前から、ぽつぽつと記録が続いたが、迷チョウとされていた時期が長かった。しかし、ここ10年程前ぐらいから県南部では、数多く見られるようになった。学校や公園の花壇などに飛来し、園芸種のパンジーに産卵し、幼虫が食する姿もよく目にする。守谷市でも確実に定着していると思われる。

テングチョウ

テングチョウ

テングチョウ

口ひげにあたる部分が長く、天狗の鼻に見立てて「テングチョウ」の名前がある。成虫越冬で、越冬後は産卵し、次の世代が初夏に発生する。盛夏には夏眠し、秋に活動した後、冬眠に入る。大きさは春型のモンシロチョウを一回り小さくした程度の大きさで、森林周辺を敏速に飛ぶ。ただ、数は非常に少なく、近隣市町村での記録もほとんどない。

ウスタビガ

ウスタビガ

ウスタビガ

年に一回、秋にだけ羽化する大型のガである。繭から天蚕糸がとれるヤママユと似ているが、一回り小さい。幼虫はクヌギやコナラなどを食べる。繭は黄緑色で長い柄で枝にぶらさがる。葉が落ちた冬の雑木林を歩くと、羽化した後のこの特徴ある繭(抜け殻)をよく見かける。繭の上やその近くには卵が産み付けられていることもある。

アケビコノハ

アケビコノハ

アケビコノハ

幼虫は、体をU字型に曲げ、目玉模様がある特徴ある体である。腹脚の一部が退化していて、尺取り虫のような歩き方をする。名前の通り、幼虫はアケビ、ミツバアケビ、ムベ等のアケビ科の植物を食する。成虫の後翅はオレンジの地色に黒い丸帯があり、鮮やかな色彩をしている。しかし、前翅の翅頂は尖っており、焦げ茶色の地味な色彩で、止まっていると後翅が見えずに名前の通り木の葉のようである。

ベニスズメ

ベニスズメ

ベニスズメ

スズメガの仲間は体が太く大型のものが多い。飛ぶ力が強く、ハチドリのように空中ではばたきしながら静止し、花の蜜を吸うこともできる。空中で1秒間に30~40回程のはばたきをする。本種は翅を広げると6㎝程あり、体や翅には他のガにはないピンク色の模様があり、綺麗なガである。似た種類もいないのですぐに判別できる。

オオミノガ

オオミノガ

オオミノガ

枯れ葉や枝を糸でつづった巣をつくる「蓑虫(ミノムシ)」は、誰もが知っている昆虫である。この仲間は日本では20種類ほど記録されているが、本種はミノガの仲間では日本最大。オスは6月ごろ羽化し、蓑から出るが、メスの成虫は、翅も脚もなく、幼虫のような形のまま一生を蓑の中で過ごす。産卵も蓑の中で行う。

 

以上、本調査地における代表的な種や特徴ある種について言及した。
これらの昆虫相の特徴は、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモン、ムラサキシジミ、クロコノマチョウといった南方系の昆虫が、ここ10年程で定着しつつあること。また、アカボシゴマダラといった外来種が入りつつあること。一方でヒオドシチョウ、テングチョウ、オオミドリシジミ、アカシジミなどの森林性の昆虫が種・個体数ともに減少傾向にあることである。
ただ、これらの昆虫相が維持できるためには、森林帯における適度な光が林床に入るための下草刈りや伐採等の人の手が入る必要がある。いわゆる「山掃除」である。湿地帯も水管理や土泥の処理などを適度にしていかないと乾燥が進み、干上がってしまう。人の手が入らないと昆虫相も単純化してしまう可能性がある環境である。